20081222

年末年始は実家に帰るのだが、別段そこでやるべきこともなく、「やることがない」のがむしろ本当の快適さでもあるわけで、本棚にある本を読んだり松山に持って帰る本を選別したりすることで大体の時間が過ぎていく。
小さい頃から身近には多種多様な本があった。ただそこは山と海に挟まれた田舎であり、田舎のガキであるおれは夏となればセミを大量に捕獲し、イモリを大量に捕獲し、川エビを大量に捕獲した。生き物の動きが活発でない季節は、自分も活発になるのをやめて家でゲームをしていた。
小学校低学年のときに親戚からプレゼントされた『シートン動物記』は、小学校を卒業するまでに読み終わらなかった。それでもいくつかの話は今も覚えている。やはり狼王ロボの印象が強いから、とりわけ面白い話だったんだろう。極寒の山岳地帯に現れるクマの描写など、明らかにこの世の物とは思えない怪物だったような気がする。
高校を出てからそれなりに本を読むようになった際、徐々にSF方面に傾いていったのは間違いなく実家の環境が影響していて、つまり自分にとって一番身近に感じられたのはあのとき見向きもしなかった本棚にいつも並んでいた、早川文庫の青背だったのだ。
ただ10代の頃から読書に親しんでおくべきだとか、子供のときに名作を読むのが得難い体験だとかいう話には、あまりピンとこない。重要でないことはないと思うのだが、面白いものは大人になってもちゃんと面白いし、何より名作をまっさらの頭で読める特権をそんな早くに失うのは勿体無いだろう。『シートン動物記』がまだ実家に残っているかどうかわからないが、もし残っているならまだ読んでいない話を是非読んでみたい。