旅日記1

「キラキラ号」という名前の夜行バスで東京に向かっている。このバス、どれほどのキラキラっぷりかと思えば何ら普通のバスと変わらない仕様。パンフレットを見るとマスコットの犬と猫が「ボクたちの名前がきまったよ!詳細は3ページで!」などと言っているので、3ページ目を開いてみたらまったく同じポーズの犬の下に「ぺぺ」、猫の下に「ミニミニ」と小さく出ていた。10秒で考えたとしか思えない。ただ前の席の人が爆音で広瀬香美を聴いているため、あのゲレンデでの眩しい恋や彼女の雪焼けした横顔を思い出してうっかりキラキラした気持ちになってきた。おそらく座席に備え付けの装置から噴き出した甘い香りのするガスが、在りもしない幻覚をおれに見せているのだと思う。