20081025

毎度のごとく格ゲーコーナーから悲鳴とも嬌声ともつかない騒音が届くのも気にせず、『ジャングル―野鳥の楽園―』とでも題された環境音楽のように聞き流すことを選択した者でしか長くは滞在できないといわれる場末のゲーセン――そう、ここはハスラー2だ。
左端のQMA筐体に向かって腰を下ろし、目下のところ修練中のスポーツ四文字をひたすら回す。
「1986年、1988年、1990年と3度最多勝を受賞している西武ライオンズ黄金時代のエースとして活躍した投手は?」
……わからない。野球を観るのは嫌いではない、だが所詮は嫌いではない程度の関心度合いなので、何も引き出しが無いに等しい。このあいだまで回していたスポーツ並べ替えも、外国人名を国籍に合わせてそれっぽい文字列にしてみるという独自のゲームへと発展をとげた。あれはあれで楽しかったが、まあそれはいいとして。
とりあえず四文字を入れてみる。
「渡辺智彦」
「ちがぁぁう」
このボイスにも既に慣れた。何事も慣れが重要だ。
背後から野球に詳しいM君がすかさず、
「それ、渡辺久信ですよ。今の西武の監督です」
「へぇ」
あまりにも抑揚のない返事が口から出たので、一瞬の間を置いてどちらからともなく吹き出した。

プロ野球のしかも現役監督の名前を知らないようでは(ニュースや中継で顔だけは覚えているが)ジンバブエ経済並に将来の見通しが立たない。でもまあ、いつかは風向きも変わるだろう。
「ひやぁーー」
格ゲーコーナーから一際甲高い野鳥の声が聞こえる。今日も平和だ。